毎年、ママの誕生日には家族そろってお花見に出かける。
家族そろってって言っても2人きりなんだけど。

 ママは自分の誕生日なのに決まって早起きしてお弁当を作る。
いつもは入らないようなお店で、ごうかなお弁当を買っていけばいいのに
ママは『好きなものをたくさん食べられた方がいいでしょ』と言って笑う。

 完全に温かくなるより先に来るママの誕生日の朝は少し寒い。
そんな中を手をつないで2人歩いて行く。
お弁当を持つ係は私だ。かたから下げるお弁当はずっしりと重たい。

 里の中に植えられている桜の木は少し花がさいていればいい方で
つぼみだってまだピンク色になっていない。
 でも目的地の桜は早ざきと言われる種類だそうで
毎年満開で私たちをむかえてくれる。
小さい頃は桜に種類があるなんて知らなくて、何でさいているのかママに聞くと
『パパが見つけて来てくれたのよ』とうれしそうに笑っていた。

 大きな桜の木の下に持って来たビニールシートをしいてお弁当を広げる。
そうして私のアカデミーの話し、友達の話し、修行の話しをしながらお弁当を食べる。
お弁当は3段のお重にぎっしりと詰めこまれていて毎年半分ぐらい残る。

「あーお腹いっぱい!晩ご飯もお弁当の残りで大丈夫そうね」
「毎年のことなんだから、もう少し少なくして作ればいいじゃん」

 お腹をさするポーズをするママを横目に
私はお弁当のふたをしようとしてお重の中を見る。
 からあげ、ウインナー、卵焼き、春野菜のサラダ、ミニトマトのピクルス、
わかめ、おかか、梅のおにぎり。

 ママがたくさんお弁当を作る理由がやっと分かった。
ママは私とママの好きなものだけじゃなくてパパの好きなものも入れていたんだ。
私といればさびしくないと笑うママだって本当はさびしいんだ。

 どうしてパパはママの誕生日にも帰って来てくれないんだろう。
 帰り道なのに、まだ少し重たいお弁当箱を持ちながら
ママと2人来た時と同じように手をつないで帰った。 


お弁当






サクラ、お誕生日おめでとう!
サラダちゃんから見たサクラを書きたいと思って書いた今作。
去年の外伝の中でヒナタが作ったお弁当をナルトに届けないと言ったボルトに
「私にだって届けられる!」と引き下がらなかったサラダちゃん。
あそこがずっとひっかかっていてモヤモヤしていたんですが
サクラは届けることが出来ないと分かっていてもサスケにお弁当を作っていたんじゃないのかな、
それをサラダちゃんはどこかで見ていたんじゃないのかな、と妄想を膨らませたものになりました。
なので時系列は去年の外伝の前の頃になります。
今年のサスケバースデーも同様にサラダちゃん視点から書きたいですね!
20160328

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