本作品は性的表現、暴力表現が多分にございます。
上記表現が苦手な方は閲覧を控えられるよう願います。
それは夢のようにうつくしいしずかな朝
男の足がサクラの肩を軽く蹴り、横向きになっていたサクラの身体は仰向けに転がされた。
「気がついているんだろう?そんなに強く殴った覚えはないからな」
男に髪の毛を乱暴に掴まれて上半身を引き起こされる。
サクラは目を開けて男の顔を観察した。
「あいつらは里に戻って行ったぜ。
深緋を持ってくればいいな」
やはりこの男だとサクラは確信する。
この目、鼻、口、忘れたくても忘れられない。
夢の中でひたすら嘲り責め立てる男の下卑た笑い声。
瞼を閉じたくなるのをぐっとこらえてサクラは尚も男を見据えた。
ずっとこの時を待っていたのだ、失敗は許されない。
「私の出番までまだだいぶあると思うけど何か用?」
サクラは瞳を逸らさずに男に嫣然と微笑みかける。
この時の為にしてきた沢山のことを忘れるな、気取られてはいけない。
サクラの顔をじっと見つめていた男が襟の袷からサクラの服の中に手を突っ込んだ。
サクラの肌は一瞬にして粟立ち、全身が固くなる。
全身の毛穴がぎゅっと縮こまるような感覚がする。
服の中から戻った男の手の中にはサクラの識別票が握られていた。
識別票の数字を確認した男はニイッと口角を上げる。
「お前、やっぱりあの時の中忍だな」
男はサクラの首から下がった鎖を引き千切ると、認識票を握りしめたその拳でサクラの左頬を思いきり殴りつけた。
「大抵の女はくのいちを辞めてくんだけどな、お前みたいなのもたまにいるんだよな」
更に一発頬を殴られて、サクラの身体は再度地面に叩き付けられる。
殴られた衝撃でサクラの口の中でコロンと堅いものが一つ転がった。
「覚えていてくれたなんて光栄ね。
もしかして時々思い出してマスターベーションでもしていたの?
犯したくのいちの識別票集めなんていい趣味してるだけあるわね」
サクラは頭を起こすと、覗き込んできた男の顔めがけて口中のものを吐き出す。
血と唾液に塗れた奥歯が男の頬に当たって落ちた。
男は自身の頬を拭うこともせずにサクラの髪の毛を掴んでその顔を覗き込む。
「お前も同じようなもんだろ?
あんなにいたぶってやったのにくのいちを続けてるんだ。
あの時はめちゃくちゃに暴れて泣き叫んで助けを乞うていたのによ。
そんなに好かったか?」
男の舌がサクラの口角から零れた血をべろりと舐め、そのまま口腔内に侵入してくる。
嫌悪感で胃の中が一瞬で熱くなったがそれでもサクラは抵抗をせずに男の要求に諾々と従う。
「それとも、俺に復讐したくてくのいちを続けてきたのか?」
「ご想像にお任せするわ」
サクラが尚も不敵に笑うのを目にした男は、サクラの身体に馬乗りになり更に彼女の顔に拳を振り下ろす。
耳元で大きな鐘を鳴らされているかのような鈍い音と衝撃がサクラの頭の中で鳴り響いていた。
殴るのに疲れたのか男の手は無遠慮にサクラの身体をまさぐりズボンを下着ごと引き下げ、女の入り口に男のそれを宛がう。
「つまんねえな。
なあ、あの時みたいに泣けよ、叫べよ、助けを呼べよ」
「誰がそんなこと」
サクラの言葉を男は嘲りと共に一蹴した。
「お前気づいてないんだな」
「何を」
男の喉が鳴らす下卑た笑い声にサクラは嫌な予感を覚える。
「お前の手足、ずっと震えてるぜ」
「うそよ」
「嘘じゃない」
男は抱え広げたサクラの両足を彼女の視界に映るように高く掲げる。
晒された白い足は確かに小刻みに震えていた。
「いや」
小さく零れたその声は、サクラの意識の外から漏れ出た悲鳴だった。
あの時の絶望がサクラの頭の中を黒く埋め尽くしてゆく。
弱かった自分、逃げられなかった自分、無力な自分。
あの昏い夜の記憶が引き戻され、目の縁が一瞬にして熱くなる。
「いや」
横に背いたサクラの顎を掴むと自分の方を向かせて男は更に続けた。
「怖いんだろ?認めろよ。
あの時みたいに助けを呼べよ、どうせ誰も助けには来ないけどな」
涙が止まらない、胃液が身体の内側を焼いている。
怖いのだ、今でも。
今この時に備えて沢山のことをしてきたはずなのに。
怖いのだ、この男が。
「たすけて」
今のサクラにはもう目を瞑ることしか出来なかった。
「助けて、サスケくん」
サクラの言葉に男の口は今まで以上に残酷に歪み、サクラの中に男自身を深く埋めようと動き出した。